COCOAの開発、運用が正常に機能していないことがわかるたった一つの証拠 −−−自省の英語表記すら修正できない厚労省

いつまでも修正されない厚労省の英語表記

わが日本の厚生労働省の公式接触確認アプリCOCOA

f:id:J_J_R:20210222035230j:plain

f:id:J_J_R:20210222035830p:plain
f:id:J_J_R:20210222035826j:plain
去年から私も使っていますが、久々に開いたら使用日数がリセットされて0になっていました(このバグについては後述)。

このアプリについては言いたいことは山ほどあるんですが、



それよりも




アプリトップの一番目立つところにある




厚生労働省の英語表記が




f:id:J_J_R:20210222035354j:plain
Ministry of Health, Labour and Welfar

Welfar


ウェルファーwww ファーーーwww

正しくは、welfare ウェルフェア
f:id:J_J_R:20210222043632j:plain
ウィズダム英和辞典 第2版」アプリより。


福祉を疎かにする我が国らしいスペルミス。

コロナだけに「十分に離れましょう(well far)」ってかwww うっさいわwww



あまりにも稚拙なミスなのでいやらしく揶揄しておきましたが、このスペルミスは去年6月のリリース当初から指摘されています。


コロナの感染拡大防止のため国民全員が使用することを推奨されるアプリですが、8ヶ月経っても修正されないところから、全然やる気がないし、バグ報告を修正に活かすフロー、つまりCOCOAの開発、運用が全く機能していないことを何よりも象徴していると思います。


以下はApp Storeのアプリレビュー画面のスクショ。

f:id:J_J_R:20210222040538j:plain

アプリ内から報告しても、厚生労働省にメールしても電話してもまともに対応してもらえないそうです。


こちらは別の人のレビュー。
f:id:J_J_R:20210222040533j:plain
アプリ上の使用日数がリセットされる問題は、画面の表記上のバグですが、接触記録の機能は動作しているため問題ないとされているそうです(肝心の接触通知も動作していないことが発覚していますが。後述。)。

意味がわかりません。使用日数がリセットされていたら正常に機能しているのかアプリ利用者が不安になるし、welfarの表記もあえて修正せずに放置しておく必要がどこにあるのでしょうか?直すのが当然でしょう。


COCOAのアプリ上では接触ログを見ることはできない(過去14日間の陽性者との接触の有無のみ)ですが、
f:id:J_J_R:20210222053038j:plain

メニュー → アプリに関するお問い合わせ → 動作情報を送信 → 動作情報を確認する

と進むとログをエクスポートできます。見ると、確かに14日分の動作記録が残っています。


f:id:J_J_R:20210222050802j:plain
f:id:J_J_R:20210222050805j:plain
f:id:J_J_R:20210222050758j:plain
f:id:J_J_R:20210222050753j:plain

iPhoneの設定から接触通知のところでもログが見られます。

ただ、私は技術的なことは全くわからないですが、誰とも接触していない深夜に大量のログが記録されているようで仕組みがよくわかりません。

COCOAは今も正常に機能していない

肝心の接触通知の機能にしても度々不具合が報告されており現在でも正常に機能していません。Android版アプリでは、本来通知すべきよりも多い接触件数が表示される問題があったり*1、逆に陽性者との接触を通知しない状態が2020年9月から2021年2月まで続いていました*2*3COCOAは善意の開発者がボランティアで参加しオープンプロジェクトで作られていたプログラムをベースにしたアプリで、11月にはGitHub上で有志の開発者から指摘されていたのに修正することなく放置していたのです*4*5現在でも、接触通知を正確に受け取るためには1日に1回程度再起動しないといけないそうです*6*7。そして結局iOSアプリでも動いていないことが最近発覚しました*8


COCOAのダウンロード数、陽性登録件数の推移 厚生労働省サイトより引用

2月19日現在の累計ダウンロード数は2,547万件、陽性登録件数は10,773件です。2月21日時点での国内感染者数は423,398人ですから、感染がわかった人のうち2.5%の人しかこのアプリの通知機能を使っていません。一人でも多くの国民がこのアプリを使って感染防止に役立てるべきと思ってきましたが、これほど少なくてはあまり意味がなく、不具合が放置されていることもあって「これを使えば安心だよ」と人に勧めることもできません。


不可解なアプリ開発の経緯

COCOAの開発は、厚生労働省から随意契約で3億9036万円でパーソルプロセス&テクノロジーに委託されましたが、再々委託を経て最終的な開発元のディザイアードにはわずか405万円しか渡っていないことがわかっています。別のコロナ関連システムの開発を受託していたという理由で自前で開発する能力のない企業に随意契約で委託されていること*9、仕事を右から左に流すだけで利益を抜いている企業があること、委託が繰り返されることで責任の存在が不明瞭になっていること、とおかしなことだらけです。

中日新聞記事より引用

73億円で開発中の「神アプリ」

COCOAがまともに機能していないのに、政府はさらに20倍近い73億円の費用をかけて「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ(仮称)」の開発を進めているそうです。しかもこのアプリを使えば外国人観客の14日間待機は免除となり、ワクチン接種も義務付けられないということで、立憲民主党尾辻かな子議員は国会で「神アプリ」と指摘しました。開催は困難であるオリンピックのために巨額の費用*10を投じ、国内へのコロナ侵入をノーガードにしてしまえるアプリとは一体どんな機能を想定しているのでしょうか?亡国自民党政権日本沈没計画としか思えません。




このアプリ開発のごたごたを見ていると、「この国は、すっかりダメになってしまいました。」という映画『バトル・ロワイアル』のたけしの言葉が思い浮かばれます。

*1:Android接触確認アプリは、1.2.1以前のバージョンをご利用の場合、1メートル以内15分以上の条件に該当する陽性者との接触があった、本来通知すべきよりも多い接触件数が表示される問題があったことがわかっています。」接触確認アプリ利用者向けQ&A|厚生労働省問④-8

*2:Android版の接触確認アプリが陽性者との接触を通知しない問題がありましたが、その間も他の端末との接触に関する情報は端末内に記録しています。」前掲問④-9

*3:Android版「COCOA」に不具合 陽性者接触を通知せず 20年9月のアプリ更新が原因 - ITmedia NEWS

*4:「「COCOA」の不具合は、去年11月時点でインターネット上で指摘されていた。アプリなどのプログラムに関する情報について技術者らがやりとりしている「GitHub」という専門のサイトだ。……厚労省も「COCOA」の品質を向上させるため、このサイトに技術情報を公開していた。それにも関わらず、問題を指摘する投稿が顧みられることはなかった。」COCOA沈黙の4か月 アプリ不具合はなぜ見過ごされたか | NHK政治マガジン

*5:【編集部コラム】接触確認アプリ「COCOA」の開発体制が確認できないのはなぜ? | Med IT Tech

*6:「本来、本アプリはGoogle社が提供する接触通知機能と連動し、陽性者が通知サーバーに登録した接触に関する情報を1日に1回程度各端末にダウンロードし、各端末に記録されている接触に関する情報と照合・通知を行う処理を行う仕組みとなっています。しかし、この処理が定期的に実行されていないケース(※1)があることが判明しています。Google社の協力を得ながら改善策の調査を進めて参りますが、当面は、陽性者との接触について正確に通知を受け取ることができるよう、定期的に(※2)本アプリを再起動していただきますようお願いいたします。」前掲問④-10

*7:COCOA、修正版配布も課題残る 「Androidは1日1回アプリの再起動を」「iOSは最新の14に」 - ITmedia NEWS

*8:「iOS13.5搭載端末で接触についての通知を受け取ることができないケースがあることがわかりました。iOS14シリーズでは通知を受け取ることができることが確認できていますのでOSを最新版にアップデートした上で本アプリをご利用いただくようお願いします。また、何らかの原因によりiOS端末で接触を通知できないケースがあるのではないか、との指摘がGitHubでなされています。順次、調査を行い、不具合の解消に努めてまいります。」前掲問④-11

*9:厚労省COCOA開発を発注した2020年5月当時、HER-SYSプロジェクトのために元請けベンダーとなったパーソルP&Tにとって降って湧いた接触確認アプリの開発は単独で請け負えるものではなかった。HER-SYS開発が佳境を迎えていたうえ、何より同社は実態として接触確認アプリ調達に十分な知見がなかったからだ。」COCOA不具合放置の遠因か、開発ベンダー選定で繰り返された「丸投げ」の実態 | 日経クロステック(xTECH)

*10:オリンピック関連でありさえすれば簡単に予算が通るというお役所事情があるのではないでしょうか?

【大村知事リコール署名】83%が無効と愛知県選管発表 他人の署名に指印押す 各報道まとめ

無効署名は全体の83.20%、362,187筆

大村知事リコール署名に大量の不正な署名が見つかった問題で、愛知県選挙管理委員会は2月1日、昨年12月から県内64の市区町村毎の選挙管理委員会で実施していた署名簿の調査を終えその取りまとめ結果を発表しました。

調査を行った全 435,334 筆のうち、有効と認められない署名は 362,187 筆で、その割合は、83.20%となっております。
また、有効と認められない署名 362,187 筆について、
① 同一人により書かれたと疑われる署名が、約 90%
② 選挙人名簿に登録されていない者の署名が、約 48%
③ 選挙人名簿に登録されていない受任者により収集された署名が、約 24% となっております。
これらの内容に重複して該当している署名もあります。

上記PDFには、市区町村毎の無効の割合も掲載されており、高いところでは90%以上の数値となっています。
署名の選管への提出の時点で必要な定数に達していないため、署名が有効かの審査は行われないはずでしたが、不正と疑われる署名があまりに多いことが問題視され調査を行うこととなりました。なお、この調査は明らかに同一筆跡による署名等を選管職員が目視で判定したものと思われ、署名の本人に聞き取り調査を実施したものではありません。よって、現時点で有効と判定されている署名の中にも他人が偽って書いたものが含まれると思われ、無効の件数はさらに増えることが予想されます。現職の市議、県議等が自身の個人情報の開示請求を行った結果、勝手に自分の名前が使われていたことが判明しています。
県選管は調査結果を基に制度の問題点や課題を総務省に提言するとしており、今回の問題をきっかけにリコール制度の改正に繋がる可能性があります。


中日新聞は社会面トップで報道 他人の署名に指印押す

前回の記事中日新聞がこの件を報道していないことを問題提起しましたが、2日朝刊には社会面トップで掲載されました。署名集めに携わった人の証言として、指印がない署名に一人で数十人分まとめて押印する人を目撃したことが書かれています。他人の署名を偽造した本人の指紋が残ってしまっているため確実な証拠となると思われます。恐らく署名を集めることに必死になってやった行為で、重い刑事罰があり後々このような大事になるとは思ってもいなかったのでしょう。*1

中日新聞2021年2月2日朝刊
中日新聞2021年2月2日朝刊

各紙、各局の報道

なお、ブコメに市長の派手なシャツのセンスを問う声が複数見られますが、名古屋市有松・鳴海地区の伝統工芸品、有松絞を加工したシャツと思われます。有松絞りの名誉のため申しておきます。
有松絞りとは | 有松・鳴海絞会館

高須氏への単独インタビュー。

河村市長記者会見の書き起こし。


上記会見の動画。

愛知県民の方へ

愛知県民の方は、このリコール署名に自分の氏名、住所、印鑑(指印)が勝手に使われた可能性があります。ご自分の署名が含まれているかどうかは、住所の選管に個人情報開示請求の手続きを行って確認することができます。法律事務所が開設した以下のサイトをご覧ください。
また、高須院長、河村市長のリコール運動に関わって他人の署名をした方もこちらに相談されることをお勧めします。高須院長らの行ったリコール運動は極めて杜撰で、その行為が法律的にどのような意味を持つか十分に検討されているように思えません。いざというとき、彼らはあなたを守ってくれません。


(追記予定)

*1:地方自治法74条の4第2項 請求者の署名を偽造し若しくはその数を増減した者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

大村知事リコール署名不正、地元中日新聞は記事を削除 河村市長、高須院長が主導

大村知事リコール署名、名古屋市選管分16万筆でも8割超が不正と発覚

河村たかし名古屋市長、「高須クリニック院長」高須克弥氏らが主導して行なっていた大村秀章愛知県知事のリコール(解職)請求署名活動は、集まった署名が住民投票実施に必要な法定数約86万に及ばず、高須院長の持病の悪化を理由にして一部自治体での期間を残したまま活動を中止しました。署名集めは県内49の自治体で行われ、64の選挙管理委員会に対し43万筆あまりが提出されました。その後、同一人物の筆跡と思われる署名や、選挙人名簿に登録されていない名前など、不正が疑われる署名が大量に含まれることが発覚しました。twitterでは署名集めの活動を行った現職市議による内部告発もありましたが、高須院長は、裏切り者と罵り、リコールに反対する勢力の工作を匂わせるなど泥沼の様相を呈してきました。リコールは不成立となりましたが、不正な署名が8割超に及ぶとの見込みが問題視され、提出された選管ごとに調査が行われることになり、刑事事件に発展する見込みとなってきました。


そして、名古屋市選管は提出された約16万人分の署名の調査を終え、8割以上に不正が疑われるという結果を発表し、1月29日(金)夜、共同通信が報じました。

知事リコール署名8割超不正疑い
名古屋市選管に提出16万人分で

2021/1/29 21:33 (JST)1/29 21:51 (JST)updated
©一般社団法人共同通信社

 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡り、名古屋市選挙管理委員会に提出された約16万人分の署名のうち、8割以上に不正が疑われるとの調査結果を市選管がまとめたことが29日分かった。愛知県選管は、県内64選管に提出された署名の大部分に不正が疑われるとして、地方自治法違反容疑での刑事告発に向け調整を進める方針を決めた。関係者が明らかにした。

 住民の意思で地方自治体の首長などを解職できる直接民主制を揺るがす重大な問題だと判断した。週明けにも選管委員会を開き、告発のタイミングなどを巡り協議する。
f:id:J_J_R:20210131184926j:plain

共同通信が報じた署名活動の様子を撮った写真でも、署名参加呼びかけのビラに河村市長、高須院長の顔写真が使われ、彼らが署名活動を主導してきたことがはっきりとわかります。

8割が不正とのことですが、一見してわかる同一筆跡のものをとりあえず無効にしたと考えられ、残りの中にも本人以外の偽造された署名がある可能性があります。複数の県議や市議、首長が自分の個人情報の開示請求をして発覚、「無断で自分の名前を書かれた」と報道されています。

東京新聞は掲載するも中日新聞は紙面に掲載せず

名古屋政界にとって重要なトピックですから当然地元名古屋の中日新聞では大きく掲載されるものと私は思っていました。しかし、1月29日(金)夕刊、30日(土)朝・夕刊、31日(日)朝刊を確認しましたが、驚くべきことにこの件は一行も報じられていません。

web上の記事を確認してみます。まずは東京新聞

東京新聞サイト上で「リコール署名」を検索
東京新聞サイト上で「リコール署名」を検索


1番上が12月28日付の下記記事。

大村知事リコール、署名の8割超が不正か 高須院長らが提出  愛知
2020年12月28日 23時17分

 美容外科高須クリニック」の高須克弥院長らが主導した愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動で、県選挙管理委員会は28日、署名の提出があった県内64選管のうち、14の選管の署名を調べたところ、署名の8割超が選挙人名簿に登録されていない人物や、同一人物の筆跡と疑われる署名があったと明らかにした。


2番目に1月29日23時24分付で共同配信の記事を出しました。前掲記事と同様の内容です。


3番目の記事は、既に削除されていますが、前掲共同の記事と更新日、書き出し、写真が同じなので2番目の記事に差し替えられたようです。


4番目が1月12日付の下記記事です。

一方、中日新聞のサイトで同じように検索してみますが、1月29日以降の記事は存在しません。

中日新聞サイト上で「リコール署名」を検索
中日新聞サイト上で「リコール署名」を検索


1番目は、1月12日付記事。

リコール署名の8割超に問題 愛知知事巡り、46選管分途中集計
2021年1月12日 22時12分 (1月12日 22時16分更新) 会員限定

 美容外科高須クリニック」の高須克弥院長らが大村秀章愛知県知事のリコール(解職請求)に向けて県内64市区町村の選管に提出した署名について、不正の有無を調べている県選管は12日、これまでに調査を終えた46の選管で署名の8割以上に問題があったと発表した。


2番目が1月29日の共同配信の記事ですが削除されています。


3番目が昨年11月10日付の下記記事。

関連記事は以上です。東京新聞には掲載されている1月29日の名古屋市選管の記事が中日新聞ではなぜ削除されているのでしょうか?紙面では全く掲載せず、webでも一度掲載した記事を削除。地元の名古屋でこそ報じる必要があるはずですが、意図的に触れないようにしているとしか考えられず、中日新聞に大変な不信感を持ちました。


中日新聞は地元名古屋で圧倒的なシェアを誇る

ここで地元愛知・名古屋における中日新聞の重要性を確認しておきます。首都圏において中日新聞社が発行する東京新聞はマイナーなローカル紙という認識だと思われますが、地元愛知、岐阜、三重における中日新聞のシェア、特に愛知では圧倒的です。そのため、東京新聞(約48万部)と中日新聞(約240万部)を合計した公称の朝刊発行部数は、毎日(約282万部)、日経(約243万部)、産経(約150万部)を上回ります*1

「読売新聞メディアデータ 2020」から都道府県別の新聞社ごとの販売部数と世帯普及率の表を以下に引用します。首都圏4県と東海4県を見比べればその違いがよくわかるでしょう。

f:id:J_J_R:20210131171300p:plain
f:id:J_J_R:20210131171319p:plain


体感的には名古屋では8割くらい、特別な理由がない限り中日新聞を取っているのが普通という感じです。よって中日新聞がどう報じるかはこの地方にとって大きな影響力があり、世論を左右する力があると言えるでしょう。


中日新聞は河村市長に対する批判を控えている?

当初の蜜月関係は打って変わり、ここ数年、大村知事と河村市長は最悪な関係が続いています。あいちトリエンナーレに発する一連の市長の言動、コロナ対応を巡ってもやたらと大村知事に反対するスタンス、コロナ禍における署名活動の実施等、主に市長の言動に疑問を覚えることばかりです。


他の在名メディア同様、中日新聞も日々の記事で二人の険悪な関係を報じてはいますが、特にリコール問題に関しては河村市長、高須院長らの疑問を覚える言動に関して新聞社として何ら批判を載せることなく、両氏の会見での主張をそのまま紙面に載せるような一見中立に見えて、実は河村市長側に肩入れしたスタンスであると感じています。

以前に私は、中日新聞社に以下のような意見を送りました。

高須クリニック院長高須氏と河村市長が主導して行っていた大村知事リコール請求について、貴紙の報道に意見します。

署名集めの受任者であった豊川市議でもある方が、集まった署名には筆跡、拇印が同じ不正な署名が大量にあったとツイッターで報告しています。このツイートに対して高須氏は、デマ呼ばわりし裏切り者と罵っています。他紙の報道にもあった通り、高須氏は署名集めに関連し、車のブレーキに細工された、事務所に盗聴器をしかけられた等の根拠不明瞭で被害妄想の発言が多々見られます。高須氏、河村氏が街頭で署名集めを行っていた場所では右翼団体暴力団関係者と思われる人物が協力していたと言う目撃情報があります。そもそも、両氏がリコール請求の理由としているあいちトリエンナーレの展示内容については、誤解、曲解に基づく主張がなされています。例えば、昭和天皇の写真を燃やした作品と主張する内容は、正しくは昭和天皇を素材にした作品が右翼団体の抗議で燃やされた事実をモチーフにした作品です(共産党のURL参照)。

署名集めは高須氏の持病の悪化により断念したと発表されましたが、要件を満たす署名数に遠く及ぼない見込みであることが理由であると思われます。選挙で選ばれた首長をリコールするということは重大であるにも関わらず、上記の通り高須氏らの行為には疑問を感じる点が多々あります。また、署名を受領する自治体、選管側にも相当の経費がかかっていると思われ、高須氏らの起こした一連の行為が妥当であったのかきちんと検証されるべきであると思います。

貴紙の報道についてですが、高須氏らの主張をそのまま掲載した記事が多くありました。事実をそのまま報道したと言われるのかもしれませんが、前述の通り、疑問を抱く内容が含まれるためそれをそのまま掲載することはプロパガンダに協力したも同然であり、背景を十分に知らない読者が記事を読み、誤った世論が形成された恐れがあります。地元を代表する新聞社として、もっと詳しく特集を行い、読者に判断の助けとなる情報や社説を提供するべきであったと考えます。

最近では内外で政治活動に伴いデマを含む情報が流布されることが問題なっており、ファクトチェックを行い、質の高い情報を提供することが新聞社に求められる使命であり存在意義であると思います。私がここに記述した情報も含めて、関係者や識者に取材を行って頂き、一連のできごとを検証する記事を掲載して頂きたく要望します。

参考URL:https://twitter.com/kuraaruk/status/1324254985513676800?s=21
https://twitter.com/katsuyatakasu/status/1325249012346155008?s=21
https://twitter.com/tsuda/status/1325055697650769922?s=21
https://twitter.com/akira_mori0120/status/1324699440549036032?s=20
https://togetter.com/li/1588566
https://www.jcp-aichi.jp/chijirecallno

河村市長は過去にリコール署名で「成功経験」

前代未聞の大量の偽造署名発覚ですが、実は河村市長がリコール署名を主導したのは初めてではありません。2010年に河村市長の公約である減税政策が名古屋市議会で否決されたことをきっかけとして議会のリコール(解散)請求を行いました。そのときは、リコール請求の署名が規定数に達し成立、翌2011年2月の住民投票議会解散への賛成が過半数となり政令指定市初のリコールが成立しました。市議は全員辞職となり、3月に行われた出直し選では市長率いる地域政党減税日本」から出馬した候補者が大量に当選、75議席中28議席を獲得し第1党となりました。

ここに来て、当時のリコール署名でも偽造があったのだという証言が出て来ました。1991年から名古屋市会議員を務め議長経験者でもある横井利明氏(自民)がblogに記述しているところによると、複数の者による同一筆跡の署名が30%程度あったが市選管の判定によって有効となったとのこと。

同様の手口は、河村市長が主導し10年前に行われた「名古屋市議会リコール」の際にもおこなわれ、署名活動をおこなった方々によると、30%程度は複数の方々による同一筆跡、いわゆる「偽造」だったという。しかし、当時、名古屋市選挙管理委員会によってこれら署名は「有効」とされ、「名古屋市議会リコール」が成立したという苦い過去がある。

このときの河村市長の「成功経験」が多少の署名の偽造も問題ないという認識となり、今回のリコール署名でノウハウとして利用された可能性もあります。しかも、当時のリコール請求で集めた署名簿はその後の市議選で選挙活動に使い回したという問題もありました。

リコール署名簿の複製大量流出か 「市議選で利用」証言も
2011年4月11日 13:13

名古屋市河村たかし市長が主導して昨年夏に実施されたリコール(議会の解散請求)運動で集まった署名簿が電子データとして保管され、外部に流出した疑いがあることが11日、分かった。一部は、3月の出直し市議選で市長側の地域政党減税日本」から出馬した候補者らが選挙で利用したとされる。

中日新聞はこの問題を大きく報じるべきだ

全体の8割超という、これだけ大量の偽造の署名が見つかったとなると、少数の者が自発的に行ったのでなく組織的に行われ、代表者である高須、河村氏らも認識していたことが強く疑われます。選挙で選ばれた首長を不正な手段で解職するなどということは、トランプ支持者がアメリカ議会を襲撃したのに匹敵するような民主主義にとって重大な問題です。中日新聞はこの問題についてもっと詳細に検証、総括する記事を掲載すべきでしょう。

*1:執筆時点Wikipedia掲載の集計による。日本の新聞 - Wikipedia

JR東海が駅構内での取材を拒否 コロナ緊急事態宣言で

コロナ感染者の増加により1都3県に緊急事態宣言が発出された1月7日、名古屋駅で新幹線の利用客に取材しようとした中日新聞他の報道機関に対しJR東海が取材を許可しなかったため断念していたことが記者のコラムで明かされていた。

f:id:J_J_R:20210120135624j:plain中日新聞2021年1月20日朝刊〈市民板(名古屋市)〉


JR東海(以下JR)は表向き「立ち会う広報課員が足りない」等を理由にしていたそうだが、JRほどの会社が特別な事情なく人を用意できないとは思えず口実であろう。コロナにより「新幹線の利用者が減っている」又は「利用を控えるべきである」という自社にとってネガティブな情報が報道に出ることをよく思わなかったJRが断ったとみるのが妥当だろう。

利益を追求する民間企業にとって、自社の良いイメージがメディアに登場するように、又、悪いイメージが登場しないようにコントロールするのが広報部の仕事であり、その動機は理解できる。しかしコロナによる影響は報道する価値、公益性があると思うところ、JRの一存でそれを断ることができるのか、また報道の側が簡単に引き下がるものなのかと少々驚きを感じた。

コラムで触れられている通り、駅構内は私有地でありJRに管理権があるので、勝手に取材して退去を求められたら応じなければならないだろう。地元の大企業であり、東海道新幹線を運行するJRは、盆暮の帰省ラッシュや新型車両のデビューなどの場面でメディアに登場するが、思えばあれらの映像や記事はJRの広報の許可を得て取材したものなのだろう。また、リニアの建設工事現場や車両所など一般に立ち入りが禁止されている場所にメディアが招待されて入ることもある。そう考えると、JRとの関係を悪化させたくないメディアの側にもある程度忖度が働くのだろうか。

メディアと取材対象者の関係は、JRに限らず大企業相手の取材では常に付き纏う問題であろう。顕著な例で言えば、原発を抱える東電や安倍政権以降の総理官邸で明らかになっているように。JRは言うまでもなく公共交通機関の運営者として社会的責任を問われる場面がある。特に建設を進めているリニアでは、大井川の水脈問題で静岡県の住民から差し止め訴訟を起こされており、調布の外環道工事で発覚した空洞問題では大震度地下の掘削に不安が生じている等公共の利益に大いに関係してくる。JRの都合で取材を拒否したという一件を知って、こうした不都合な真実を報じさせないようにする力が働くのではないかと不安を覚えた。

メディアの側にも、報道には単なる企業の広報メディアとは違う存在意義があるのだから、忖度することなくその使命を果たして欲しいと思う。

Amazonギフト券の転売にAmazonの責任はないのか

Amazonギフト券の転売について書いたらくからちゃ氏(id:lacucaracha)のこちらの記事に、以下のコメントを残した。

www.yutorism.jp

id:J_J_R 2020/12/10
この問題、amazonが詐欺の被害者に返還してるなら良いけど、一方的に無効にするだけならその分丸儲けだよね。/規約を根拠にしているけど購入者が善意無過失であればamazonを訴えたら勝てるのでは?

それに対し直接的ではないにせよ、いくつか言及されたので掘り下げたい。
大前提としては、私は、この手の現金化/転売サービスを利用したことは一度もない(Amazonギフト券自体は日常的に利用している。)。
大元のAmazonが利用するなとも言っており*1、特殊詐欺等の犯罪、マネーロンダリングに利用されている可能性があることから利用すべきでないことは言うまでもない。その上で、この問題にはいくつかの気になる点がある。


Amazonは丸儲けか?

id:inazuma2073 アマゾンがするなって言ってることをしてるんだから、アマゾン丸儲けとはちょっと違うのでは?


会計的に言えば、Amazonは、当初ギフト券購入者からの現金払込と引き換えに発行した商品券(預かり金、債務)を、規約違反を理由に一方的に無効とすることによって商品券は債務消滅益(雑収入)に振り替えられる。これは純粋にAmazonの利益となる。よって丸儲けであることは純然たる事実だ。

これは例えば、ネットゲーム運営会社が規約違反を理由にBANをした会員に会費を返還しないこととも性質が異なる。ネットゲーム等であれば返還しないこととなった金銭はサービスの利用対価、あるいは損害賠償に充てられるのであるが、ギフト券の場合、換金性の高い金券であり、Amazonは何らの商品や役務提供もなしに払い込まれた金銭を無償で取得することとなる。特殊詐欺等の犯罪に対策すべきであるのはもちろんだが、そのこととAmazonが無償で利益を得ることとは別問題だ。ギフト券が特殊詐欺や不正転売に使われ、それを探知し無効にすることでAmazonは漁夫の利を得ることになるのだ。Amazonにとっては被害どころか利益になるから積極的にこれを防止するインセンティブがない。その点で以下のコメントは的を得ている。

id:kojietta 犯罪のケースで、以前は被害者が損をしてアマギフ出品者と購入者が得をしていた。今は被害者と購入者が損をしてアマギフ出品者とamazonが得をしている。amazonは自分が得をする側に回ったからこれ以上対策する気がない。


ここで気になるのは、Amazonギフト券が特殊詐欺の詐取手段として使われることが知られるようになって久しいが、Amazonは捜査機関に協力して犯人検挙や、被害を阻止できた場合は被害者に弁済したりしているのだろうか?ということである。私のコメントに「amazonが詐欺の被害者に返還してるなら良いけど」と書いたのは、その点が不明であるからだ。コンビニで店員がギフト券を買いに来た被害者を水際で制止してニュースで報じられることがあるが、Amazonの措置で被害を防いだと言う報道は聞いたことがない。被害者の手元には送信したギフト券番号が残るから、その番号がどこで誰に使われたか調査すれば犯人検挙に結び付くはずである。らくからちゃ氏の指摘の通り、資金決済法に基づきAmazonに立入検査に入るべきである。


転売購入者は保護されないか?

次に転売購入者の側の論点だ。転売サイトでディスカウントされたギフト券を購入した者はその全額がAmazonの措置により無効とされても仕方がないのだろうか。

id:cinefuk Amazonは不正なAmaギフを登録したユーザを「犯罪組織の一味」と捉えて永久垢BAN(Kindleも)する権限もある筈。 https://twitter.com/cinefuk/status/1335758589856628736 うすうす出所わかってて利用している人は「善意の第三者」と言えない

id:jaguarsan 頭悪いコメが大企業Amazonを悪役にしてりゃ済むと考えてるけど、マネーロンダリングに使われた購入代金が満額支払われると信じてるなら社会経験少なすぎでは。

id:stp7 転売サイトから購入したギフトコードを使用するのは規約で禁止されているんだから、BANされても何も文句言えないだろ。 https://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=4705466051

もちろん、転売サイトが不正な手段であることを知りながらや、Amazonによる直接の警告を受けたのにも関わらず購入を続けた者が保護されないのは当然である。だが、このような背景を知らずに、ギフト券のセール販売を行う大手事業者との違いを意識せず転売サイトを利用する者(完全に情報弱者ではあるが)がいないとは限らない。「購入者が善意無過失であれば」と限定して書いたのはそのためだ。

前述したようにAmazonのサイト内に「転売サイトを利用するな」というページはあるにはあるが、らくからちゃ氏の記事でも書いてあるように、ギフト券の登録ページ等から目立つように導線が用意されていないからAmazon の側で十分な警告を行なったとは言えない面がある。


Amazonサインイン



Amazonの規約(Amazonギフト券細則5)には以下のように定めがあるので、不正利用されたギフト券を無効とされることに利用者は同意したことになる。

本細則に違反するギフト券の利用 お客様は、本細則を順守し、誤解を招く方法、詐欺的な方法、不公正な方法、その他アマゾン、アマゾンジャパン合同会社、関連会社またはお客様に有害な方法でギフト券を使用しません。アマゾンは、お客様への通知なく、(i)返金を伴うことなくギフト券(ギフト券の残高を含みます)を無効とし、(ii)アカウントを終了もしくは停止し、(iii)アマゾンサイト上のサービスの利用を終了もしくは停止し、(iv)注文をキャンセルもしくは制限し、または(v)詐欺、不正行為もしくは未承認の販売業者からのギフト券の購入を含むその他の本細則違反により、ギフト券が取得、使用もしくはアカウントに適用されたとアマゾンが疑う場合に、他の支払い方法を要求する権利を留保します。

Amazon.co.jp ヘルプ: Amazonギフト券細則


しかし、不正利用によってAmazonが負う損害を大きく超えて消費者の権利を不当に制限したものであるとされれば、消費者契約法に基づき上記規約は無効となる。私が「規約を根拠にしているけど購入者が善意無過失であればamazonを訴えたら勝てるのでは?」と書いたのはこのことである。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

消費者契約法 | e-Gov法令検索

Amazonには、一企業のサービスを超えてインフラとしても利用されつつある資金決済サービスの運営者として、社会的責任としてこれらの問題に対処する義務がある。